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アートグランプリ受賞者が語る!
中小企業IT支援と「いいインターネット」構想 河原 聖 - MOVの100人インタビュー
--まずは簡単な自己紹介をお願いします。
フリーランスで活動している河原聖(かわはら・さとし)と申します。
ウェブマーケティングのコンサルティング、ウェブサイト制作、広告代理、業務改善などを専門としています。
具体的には、ペルソナ設計やカスタマージャーニーマップの作成、サイトリニューアル、LP制作、年間1億円規模のウェブ広告運用、GA4によるコンバージョン測定環境の構築。さらにPythonやGASを使った業務効率化ツールの開発、Notionでの社内wiki構築、メール設定なども手がけています。
クライアントのほとんどがIT部門を持たない中小企業なので、自然と守備範囲が広くなりました。
--ご経歴を教えてください。
大学時代は音楽制作をしていました。
もちろん音楽を作ること自体も楽しかったのですが、それ以上に魅力を感じていたのが「マーケティング」や「プロモーション」の部分でした。作った音楽をどう売るか、どうやって多くの人に知ってもらうかを考えることが好きだったのです。
この経験から、マーケティングの道に進もうと新卒でSEO会社に入社し、その後、事業会社でホームページ制作やウェブマーケティングを担当し、部長職も経験しました。様々な組織での経験を経て、退職後はまず生活のために知人の仕事を手伝い始めました。
その仕事が評価され、「この人を紹介したい」「あの案件もお願いしたい」と、人から人へと紹介が続いていき、気がつけばフリーランスとして10年が経過していました。正直なところ、「フリーランスになろう」と決意して始めたわけではありません。目の前の仕事に取り組み、流れに身を任せているうちに、自然と今の働き方になっていたというのが実情です。
--フリーランスとして活動する中で、様々な学びや挑戦をされているそうですね。
はい、本業に関わる学びから、資格取得、プロジェクトへの参加まで、いろいろと挑戦してきました。
その1つは、2020年から3年間かけて取得したMBAです。
コロナ禍で案件が落ち着いた時期に、今後のキャリアを見据えてリスキリングしようと考えました。年齢的にもちょうど良いタイミングだと思い、国内の社会人向けの学校に入学しました。
経営戦略、マーケティング戦略、財務分析、組織マネジメントなどを体系的に学んだことで、視野が大きく広がりました。今では企業の経営者と、単なるウェブ制作や広告の話だけでなく、事業全体のポートフォリオの見直しや人材戦略といった経営レベルの会話ができるようになりました。この経験が、現在のクライアントワークの質を確実に高めていると感じています。
仕事をしながら課題をこなすのは大変で、その頃が最も頻繁にMOVにいたかもしれません。
もう1つは、日本酒好きの趣味が高じて取得した日本酒のソムリエ資格「SAKE DIPLOMA」です。この資格を活用してのビジネスはしていませんが、会話のきっかけとして、「あの人、変わった資格を持っているよ」と紹介されやすい。クライアントや知人から、ペアリングの相談やおすすめの銘柄を聞かれることもちょくちょくあって、そういう会話は楽しいですね。おかげで周りから「お酒の人」と認識されています。
それから先日は、「神戸六甲ミーツ・アート2025」というアートイベントに『風の環』という10人のチームで作品を出展し、グランプリをいただきました。
これまで周りからは『マーケティングの人』『お酒の人』として覚えてもらっていましたが、そこに「アート作品でグランプリを取った人」という要素も加わって、「何をやっている人ですか?」と興味を持ってもらえるのは楽しいですね。
--アートプロジェクトについて、もう少し詳しく教えてください。
神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond
風の環 Echoes of the wind グランプリ受賞 「しらす、山に昇る」
化粧品のマーケティング支援で関わったプロジェクトメンバーとの縁が続いており、その人脈から生まれたプロジェクトです。そこから漁業、林業、街づくり、センサー開発といった多様な専門家が集まるチーム『風の環』へと発展していきました。
作品表現の一部として、市販されていない特殊なセンサーが使われています。このセンサーが取得した風向・風速データをリアルタイムに表示するページの実装をはじめ、プロジェクトのウェブサイト構築・SNS運営を担当しました。
とくに、漁業の方、林業の方、街づくりの方、センサー開発者のような別業種の人と一緒に、1つのコンセプトを作り上げて世に出すのは、視野が広がる貴重な経験でした。
自分の名前がアート作品の作者として載るなんて、本業だけをしていたら絶対に経験できなかったことです。会社に縛られないフリーランスという働き方だからこその、貴重な経験だったと思います。
また、AI時代に何でも自動化される中だからこそ、自分の手でクリエイティブなものを作ることの価値を再認識しました。これからもクリエイターとして在り続けたいという想いが、より強くなりました。
今後もビジネスや能力の枠にとらわれず、面白いと思ったことには積極的に関わっていきたいと考えています。
--MOVはどのように利用していますか?
フリーランスになった2015年に登録しました。今は、週の半分くらい、11時から17時の間くらいの時間にいます。
コロナ禍以降はオンラインミーティングが増えて、秘匿性の高い環境が必要な時間が増えました。オンラインミーティングは2~3件まとめて1日に入れて、家で対応することが多いです。
ミーティングがない日はMOVに来て、1人で作業をしています。デスクが大きいので助かりますね。おしゃれな空間で居心地も良いので、10年ずっと利用して気に入っていますよ。
--今後、どんなことに挑戦したいですか?
漠然とした話になりますが、「いいインターネット」を創ることを考えています。まだ具体的なアクションまでは至っていませんが、この問題意識を共有し、議論していくことが大切だと思っています。
--そう考えるようになったきっかけは?
私はWindows95の時代にインターネットを始めました。その頃から見て、今のインターネットは便利になった反面、面白さは減っているような気がしています。
--具体的に、どういった変化を感じていますか?
当初のインターネットには、個人の視点で作られた面白いウェブサイトが沢山ありました。しかし企業が参入し、商業化が進むにつれて、検索結果は収益目的のサイトで占められ、個人サイトは広告で埋め尽くされるようになりました。
心理的な誘導テクニックや、システムの隙を突いた一時的な手法で上位表示を狙うサイトが溢れる一方で、純粋に良質なコンテンツを地道に作り続けるサイトは見つけてもらえない。コンテンツの本質的な価値よりも、短期的な収益化の手法が優先される状況です。
限られた検索上位を巡る過度な競争の結果、ユーザーが本当に求めている価値ある情報ではなく、事業者の利益を優先したコンテンツが溢れてしまっている。これは本来のインターネットのあり方ではないと思うのです。
--その現状に、ご自身はどう向き合っていますか?
私自身も広告事業者として活動していますが、だからこそ責任を感じています。クライアントには「売上だけにフォーカスした悪質な広告は出稿しない」と明確に伝えています。
悪質な手法で短期的に売上を上げ、対策されたらまた新しい抜け道を探す――そんないたちごっこはビジネスの本質ではありません。本来は、企業の強みや差別化を活かした戦略を突き詰めることが重要です。もしその部分が弱いなら、一緒に議論し、構築を支援する。それが私の仕事だと考えています。
ウェブマーケティング業界全体も、持続可能なあり方を模索する時期に来ています。具体的な解決策はまだ見えていませんが、こうして問題意識を言語化し、共有することから始めたい。今回、このように私の考えを文字にしていただけたことも、「いいインターネット」を創る議論を広げる貴重な一歩だと思っています。
MOVで見かけた際には、皆さんとぜひ議論させてください。
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