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広島から北広島へ。
最先端のAIで人材の課題と向き合う 株式会社ビースポーク 田中 大幸 - MOVの100人インタビュー

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--まずは簡単な自己紹介をお願いします。

田中大幸(たなか・ひろゆき)です。株式会社ビースポークというAIスタートアップでプロダクトマネージャーとして働いており、オフィスとして利用させていただいているのがMOVです。

仕事はフルリモートという環境ということもあり、2025年4月に東京都世田谷区から北海道の北広島市に移住しました。

--ご経歴を教えてください。

広島県広島市の出身です。実家は私が3歳の頃から28歳の頃まで約25年間自動車の修理工場を経営していた(*70歳で父は引退しました)こともあり、身近な経験をもとに起業する人が珍しくない環境で育ちました。

広島市立舟入高等学校の国際コミュニケーションコースを卒業後、イギリスのケント大学と同大学院 (University of Kent) に進みました。専攻は言語学(Linguistics: 言語のサイエンス)です。

当時の研究テーマは、音の波(音声)を分析して教育に活かすことでした。その関連で、学生のときから現地の語学学校で、第2外国語としての英語や演劇 (Performing Arts) を教えていました。

大学院を卒業する2016年、まだヨーロッパに住み続けたいと思っていましたが、ブレグジット(Brexit: 英国のEU離脱)の住民投票があり、イギリスでは労働ビザが取りにくくなっていました。

他のヨーロッパの国で、日本のパスポートで引っ越しやすいところと考えたとき、オランダの起業ビザに目が行きました。

ビザを得て、2016年(24歳の時)にオランダのデン・ハーグで起業したのは、修士課程での研究を活かし「スピーチ分析やパブリックスピーキング等のカリキュラム開発・コーチング」を行なう事業でした。若さゆえの勢いと、欧州の生徒たちへの指導経験を積んでいたことも、起業の後押しになりました。

しかし、当時はオランダに自身の繋がり(人的ネットワーク)が少ないことや、ビジネス経験の少なさから壁にぶつかりました。将来を考え、オランダで継続するより、リカバリーが難しくなる前に一度ビジネスを閉じて雇われ身として出直した方が良いと思い、2017年に日本に帰ってきました。

日本帰国後は、タクトピア株式会社という教育系スタートアップで新規教育事業の立ち上げ、シアトル発のAIスタートアップ「DefinedCrowd(現Defined.ai)」では、言語学専門のプロジェクトマネージャー、APAC(アジア太平洋地域)のカスタマーサクセス(CS)マネージャーなどを担いました。

それから楽天でAI部門のCSマネージャー、TikTokの日本法人Bytedance株式会社で検索AIのオペレーションチームでの中間管理職(約30名のマネジメント)を経て、現在のビースポークに入社しました。

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--現在はどんな仕事をしていますか?

当初はシニアカスタマーサクセスマネージャーとして、チームのマネジメント職で入社しましたが、今は上司であり、弊社のCPO(チーフプロダクトオフィサー)である、米国出身のJ氏のチームでプロダクトマネジメントを担っています。

元々は行政向けAIチャットボットを中心に扱ってきた弊社は今、新たな分野で社会課題の解決をしようと、「BeTrained(ビートレインド)」という製品をリリースしました。

この製品のニーズ調査、機能要件記述、優先順位付けから、世の中に出すまで、全体のマネジメントを担っています。

--「BeTrained」とはどんな製品ですか?

簡単に言うと、AIを活用した「技能伝承」のための「多言語対応動画研修プラットフォーム」です。

建設業や造船業、宿泊業など、ベテランスタッフの方々の熟練の業が必要な分野において、お客様にスマホで作業の動画を撮っていただきます。「こういう場合に失敗した」「こうすればより効率よく・上手くこなせる」といった「暗黙知・経験知」をナレーションで入れていただきます。そのような動画をBeTrained上にアップロードしていただくと、最新のAIモデルを駆使したシステムが、専門用語や方言にも正確に対応した字幕と多言語翻訳(ベトナム語、インドネシア語等)、AIの合成音声を付けます。ユーザーはそれらを整理されたコンテンツとして閲覧し、学習できるようになるというものです。

また、追加機能として、その他の会話系AI機能も追加実装を進めています。

主には多国籍の従業員教育をサポートすることを念頭においていますが、実際には国籍に関わらず、人手不足や技能伝承の遅れを解消するツールとして幅広くお使いいただけます。

ちなみに、ビースポークの強みは、自社が多国籍の従業員を抱え、独自の品質向上プロセスを持っているということです。

BeTrainedにも品質チェックの専用プロセスを組み込み、人間がAIのアウトプットを精査・修正できるHITL (Human-in-the-loop)のワークフローを充実させています。

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--なぜ北海道に移住したのですか?

妻もフランス発のアプリの会社に日本事業責任者として、昨年秋に転職し、夫婦ともにフルリモートの仕事になったのがきっかけです。

また、妻も日本の外に住んでいたことがあり(オーストラリアに約7年)、夫婦とも、自然豊かで欧米的なところで暮らしたいと考えていたのです。

フルリモートとはいえ空港にもアクセスが非常に良く、かつ地域に貢献できるような場所ということで、北海道の北広島市を選びました。

只、月に1回土曜日に、外部講師として東京都内のインターナショナルスクールでアントレプレナーシップ研修を行なう副業をしているため、月に1〜2回は東京に来ています。

--移住後の生活はどうですか?

様々なことに関わらせていただき、非常に充実しています。

北広島市は、明治時代に私の生まれ故郷である広島県からの移住者が開拓した町です。2023年にはプロ野球、パ・リーグの北海道日本ハムファイターズの新本拠地「エスコンフィールド北海道」ができ、当時は日本の地価上昇ランキング1位にもなりました。

北広島市は人口が5万6千人、対してエスコンフィールドの収容観客数は約3万5千人なので、試合日は急に人口増加する、特殊な街です。

私はもともと広島カープファンですが、エスコンフィールドから徒歩15分のところに移住し、元々ファイターズには好きな選手も多かったため、今では両方のチームを本気で応援しています(リーグが違ってよかったです 笑)。

また、2025年6月からは、事業構想大学院大学の「北海道事業構想イノベーションラボ」第1期の研究員としても活動をさせていただいています。

北広島市のビジネス課題を解決し、スポーツを中心としたまちづくりを行う事業で、20回ほどの研究会に加えて、2026年3月にはエスコンフィールドにてビジネスピッチがあります。現在、空き時間を見つけながら、リサーチを進め事業構想を練っています。

他にも、札幌ではトラクターの使用方法を教えていただき、畑を手伝わせていただいたり、自然に触れる機会が増えています。

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--趣味は何ですか?

主には、テニス、料理、歌、旅行、スポーツ観戦(野球、サッカー、バレーボール)等です。

中学・高校時代にはテニスをしていて、選手育成コースと呼ばれるプログラムに参加していました。 (只、当時は期待していた結果はでませんでした 笑)また、イギリスでは大学のバレーボールチームで第2リベロとしてよく試合の途中から出場させていただいていました。

東京に住んでいた頃は、友達たちとの旅行でシュノーケリングやダイビング、スキー等いろいろなことをやっていました。今度、北海道マラソンに出ることになったのも、友達たちのおかげです。(*インタビュー後、マラソンは終了:脚を痛め、24kmで無念のリタイア 笑)

北海道では冬に良質な雪でスキーができることを楽しみにしています。

スポーツ観戦においては、やはり、エスコンフィールドへ通うことです。エスコンフィールドには球場以外にも、飲食店・温泉等さまざまな施設があって、試合日に入場券で1000円前後で入れる日もあり、息抜きに夫婦でよく訪れています。

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--今後、どんなテーマで活動したいですか?

プロダクトマネジメント視点では、人手不足を克服するために、より現場目線でテクノロジーの力でサポートするということをテーマに掲げたいです。

加えて、本業も北海道での活動もそうですが、教育分野とテクノロジーや文化を掛け合わせるようなことをしたいです。

北海道での活動では様々な分野の方々とコラボレーションし、スポーツ系の教育プログラムを作ったり等、いろんなオプションを考えています。

「グローカル(グローバルなマインドセットを持ちながらローカルに動ける」な感覚を持った若い層が増えるよう、次世代型の教育に貢献したいです。

--MOVではどんな人とつながれたら良いと思いますか?

AIのプロダクトマネージャーという文脈では、ものづくりやサービス業などの方々と繋がれたら良いと思います。

「人手不足」や「技術伝承」というテーマで、業界での最新のニーズを教えていただきたいです。他業種の方にインタビューをさせていただくきっかけや、現場を見せていただくきっかけに繋がると嬉しいです。

また、個人的には教育分野、言語学分野、スポーツ分野の方々とお話しし、知見・視野を広げたいと思っています。

相互に提案し合って何かできれば、MOVのエコシステムとしても、うまく機能した事例になるのではないでしょうか。

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