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静岡県のラグビーチームのために働く。
高校生合同チームの全国大会出場がラグビーの未来を切り拓く。 谷 俊一郎 - MOVの100人インタビュー
--まずは簡単な自己紹介をお願いします。
谷 俊一郎(たに・しゅんいちろう)と申します。個人の会社(株式会社トモ二マックス)から、静岡県のプロラグビーチーム「静岡ブルーレヴス」に出向していて、試合興行やファン施策、集客などの事業全般を担当しています。
静岡ブルーレヴスは、ヤマハ発動機の完全子会社で、日本のトップレベルにあたる「ジャパンラグビー リーグワン」にも入っているチームです。
家庭のために自宅は東京に置きつつ、毎週静岡のチーム拠点に出かけて行く日々です。
--なぜラグビーチームの事業に入ったのですか?
最初の就職はコンサルティング会社のアクセンチュア株式会社でした。
スポーツの仕事をしたかったので4年で辞め、転職した先はサッカーチームの東京ヴェルディです。
さらにその後、2019年に日本で行われたラグビーワールドカップの組織委員会の求人に応募し、入りました。
ワールドカップの組織委員会が解散すると、今度はオリンピック・パラリンピックの組織委員会に入りました。そしてコロナ禍で延期されたオリンピック・パラリンピックが終わるころ、現れてきたのが、今のチームとのご縁でした。
ワールドカップの時の仲間が静岡ブルーレヴスの仕事に就いていて、大学院の講師の先生もチームの社長になりました。ワールドカップの仕事では静岡のスタジアムを担当していたこともあって、導かれるようにして今の仕事に就いたのです。
谷さんのお仕事について、noteの記事でもぜひ◎
--日本のラグビー市場について教えてください。
2019年のラグビーワールドカップでせっかく盛り上がったのに、コロナ禍が発生して、その勢いはすっかり削がれてしまいました。市場として多少の伸びはあるものの、大きく成長もしていないような状態です。
世界的な位置づけで見ても、ワールドカップでは日本がベスト8に入りましたが、野球やサッカーのようなメジャースポーツと比べれば、まだまだそれほど強いとは言えないと思います。
我々のチームの場合、最も良い席でも1万円台、数が多い一般席は3000円前後です。子どもなら数百円の席からあります。良い席は安定して売れていますが、良い席を購入する人も含め、ラグビーのファンは年齢層が高く、平均して50代くらいです。
我々としても、いきなり20代くらいの層にアプローチするのはハードルが高いと感じます。40代なら子どもを連れてファミリーで来てくれる可能性が高いので、主なターゲットは40代から60代ですね。
--ラグビーの普及について、どう考えていますか?
ラグビーは体育で教えず、部活もあまりないですよね。学校にバスケットゴールやサッカーゴールはありますが、ラグビーゴールを置いている学校はほとんどありません。また、やりたい人を集めようとしても、あまり多くありません。
でも、どちらが先なのかは分からないと思います。Jリーグのような人気の競技を見るから皆がサッカーをやりたがるのか、皆がサッカーをやるから見に行く人も多いのか。
結局、「やるスポーツ」と「見るスポーツ」は別でも構わないと思うんですよ、相撲やボクシングだって、みんなやらないけれど、見る人は多いでしょう。
我々がチームとして広報するときに伝えたいのは、ルールが分からなくてもとにかく来てもらえば楽しいということです。「とりあえずデカくて鍛えた選手が、ボールを持って全力で走って全力でぶつかって、楽しいでしょう」ということ。そして、「ルールはよく分からないけれど、静岡のチームなら応援しようかな」と思ってもらえれば嬉しいです。
だから我々の仕事はエンターテインメントビジネス、レジャービジネスです。県内のレジャー施設や様々なエンターテイメントだってライバルなんです。
「やるスポーツ」としても、静岡県内の小学校などでラグビー体験を開催し、存在を知ってもらうような活動をしています。
一方では「見るスポーツ」として、商業施設や地域のお祭り・イベントなどでPR活動をします。
「ラグビーをやっています、見に来ませんか」と言っても来てくれません。「ラグビーの試合以外にも、イベントなど楽しいことがありますよ。休日にお暇なら、楽しい時間を過ごしに来ませんか?」と伝えるのです。
--今後、やりたいことは何ですか?
今、静岡ブルーレヴズは、本拠地である磐田市内で磐田部活という中学校合同でのクラブ活動でラグビーを指導しています。
各校で部活を作れるほどの人数が集まらないので、合同チームとして集め、部活として市から認められて指導をするのです。この磐田部活の活動は、静岡ブルーレヴスのジュニアチームのような位置づけになっています。
この動きを今後、高校にも広げようとしています。
部活として合同チームを組織するには、まず各校で、名前だけでも顧問がついた部活を成立させなければなりません。A校で1名のラグビー部、B校で2名のラグビー部と形だけでも作ってもらえれば、あとは練習も遠征も我々がすべて面倒を見るというスキームです。
その合同チームで、大阪府の花園で行われる全国大会に出場することを視野に入れています。
部活の外注や廃止の動きが広がってきています。今までのやり方では、強豪校だけが部活として残され、強豪校に入れない子はスポーツ自体を諦めるようになってしまうと思います。
しかし、部活という、能力にかかわらず誰もが気軽に参加できるスポーツの場が、制度・文化として成立しているのは好機です。
我々はこの文化を継承し、部活という名前を守りながら、クラブチームとしての活動実態を備えていきたいのです。
こういった新しい取り組みは、部活の人口が少ないラグビーだからこそ、先駆けて取り組めることだと思っています。
--余暇には何をしていますか?
3歳と5歳の子どもがいて、休日はほとんど子どもの相手で終わってしまいます。可愛さもありつつ、大変です。
でも、まだ小さい今のうちにできるだけ長く一緒に過ごさないと、すぐ大人になってしまいますからね。
--静岡と往復する生活はどうですか?
ワールドカップの仕事で静岡担当になるまで、静岡にはあまり縁がありませんでした。東京ヴェルディ時代に磐田の試合に車で行って、とても遠いと感じたものです。
今は、12月から6月のシーズン中は週に3日以上、シーズンオフの時期は週2日ほどと、頻繁に行き来するようになって、ずいぶん慣れました。
ただ、慣れたとはいっても、移動に疲れるのは事実です。新幹線に嫌気が差すこともあります。毎週のように通う生活も丸4年を過ぎて、チームのホームタウンである磐田市に愛着も湧いています。
家族のこともあり、なかなか実際に移住とはいきませんが、何も制約がなければ磐田市に住んでしまいたいと思うこともありますよ。
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