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おいしいものが大好き。人材育成事業から見る日本の30年
ダーキー・ジェイソン - MOVの100人インタビュー
--まずは簡単な自己紹介をお願いします。
Durkee Jason(ダーキー・ジェイソン)です。アメリカのシアトル出身です。日本に来たのは1992年で、大学を出てから30年ほどずっと人材育成の世界にいます。
企業向けの研修について打ち合わせをし、企画や準備をし、実施する。これらの一連の流れが9割を占めている仕事です。
--なぜ日本に来たのですか?
1990年代前半のアメリカには、一種の「成功パターン」がありました。アメリカ東部の有名大学に入り、ビジネスとアジアン・スタディーズを専攻して、3年生で日本に留学し、インターンで日本の有名企業を体験するというコースです。
しかし考えてみると、何もない状態で外国から日本に来て成功をつかむには、人脈の構築などで時間がかかります。
すると、3年生で日本に留学して、もしうまくいったら道半ばで帰ることになり、「何でもっと早く来なかったんだろう」と後悔します。もしダメだったら、「もったいない、1番大事な3年生の時期、損をした」と後悔します。3年生からの挑戦では、どちらにしても後悔が残る「負け」です。
だったらもう最初から日本に行ってしまおうと思い、高校を卒業してすぐ、そのまま日本の大学に進学しました。
--大学卒業後はどのように進路を決めましたか?
大学時代は今とは違って、1ドルが78円くらい。円高の時代でした。お金が必要で、アルバイトなどもいろいろしていました。
その中の1つで、とても気が合って可愛がってもらっていたのが、企業向けの研修を行うベンチャー企業です。ちょうど就職を考える頃、その会社が大きな契約を取ったので、そのままそこに入社しました。
10年くらい勤めて独立し、今は法人化して活動しています。
--30年前と比べて、働く日本人はどう変化していますか?
昔の「行け行けドンドン」ではなくなったのは確かですよね。良くも悪くも平坦に、少しつまらなくなった印象です。
激しく対立し、ものを投げるくらい激高するようなことがなくなって、いわゆる心理的安全性が確保されてきています。
その一方で、ものすごく楽しい会話や、勢い、緊張感のような良い方向のエネルギーも、減っているようです。体だけが動いて、なんとなくの雰囲気で仕事をしている人が多いのではないかなと思います。
今もエネルギーのある方はいますが、ある人とない人、真ん中がいなくて、二極化されているように感じますね。
心理的安全性が確保されていなければイノベーションは生まれない、というのも1つの真実ではあります。しかし逆にエネルギーが減りすぎても、やはりイノベーションや競争力は生まれないのではないでしょうか。
日本の企業とそこに属する会社員は、規定やコンプライアンスを非常に気にします。あまり細かにプロセスを押し付けられてしまうと、日本がエネルギーを持ってその良さを活かすことはできません。
そんな風に縛られてつまらなくなり、あえて競争力を下げるような動きをして、何が楽しいのだろうかと疑問に思うこともあります。僕も、考えが古臭くなったのかもしれませんけれどね。
--どんな研修を提供していますか?
企業が集合で行う、対面やリモートの研修を提供しています。
階層別、目的別にいろいろなメニューがありますが、コミュニケーションなどのヒューマンスキルを扱うものが多いです。
たとえば新入社員には、対面でのビジネスコミュニケーションのコツや、主体的に動くことについて。中堅の管理職層には、若い世代とのコミュニケーションの取り方、年上の部下の取り扱いについて。そして上の方の階層では、海外とのやりとりを円滑にするグローバルコミュニケーションや、新しい物事を切りひらくイノベーションを主軸にした研修を行っています。
--研修はリモートと対面、どちらが多いですか?
最近は少しずつ対面に戻りつつありますが、個別のニーズや研修の内容に合わせて、引き続きリモートも行っています。グループワークやディスカッションが多い研修は、対面の方が良い場合が多いです。
しかし、知識の習得がメインの研修は、リモートの方が集中しやすいでしょう。
また、大手企業で全国の全社員が受ける研修では、3回のうち1回は対面で、2回はリモートで開催するなどして、北海道から沖縄までをまとめてカバーする場合もあります。
--今後、どんな活動をしたいですか?
今、日本で課題になっているのはAIです。
日本の企業はとにかく慎重でリスクを恐れます。
気持ちは分からなくはないのですが、その結果として、海外に後れを取っていることも見逃せません。
このテーマを今後の研修の中に活かしていきたいと思います。
--MOVはどのように利用していますか?
仕事用のスペースが欲しかったんです。家からそれほど遠くなくて、来てみて良さそうだなと思って登録しました。2013年くらいでしょうか、けっこう前のことです。
新宿にオフィスはあるのですが、あまり使っていません。かといって1日7時間も喫茶店で作業することはできないので、お客様のところに行かない作業があるときはMOVに来ています。
積極的に話しかけたりはしませんが、よく見かける方とは金曜にビール片手に挨拶し、乾杯を交わすことはありますよ。
--プライベートではどんな活動をしていますか?
おいしいものを食べるのが好きです。やはり特に日本の料理が好きで。
もちろん、おすすめのお店もたくさんあります。すし、居酒屋、焼鳥、焼肉......。でも、紹介して行列ができるようになったら嫌なので、内緒です。
あとは子どもを育てているので、プライベートの時間は子どもの行事に付き合ったり準備したりしていることが多いですね。
--アメリカに帰ることは考えていますか?
ないですね。アメリカからは情報発信が多く、住んでいなくてもしっかり味わえます。それで十分、もういいと思います。
それに、同じものでもニューヨークより恵比寿のほうが、おいしいですから。
--日本についてどう思っていますか?
大好きです。応援したい。日本に慣れて、日本語ができるなら、天国だと思います。
電車があってどこでも行ける、毎日酒が飲める、人は優しい。そして何よりも食べ物がおいしい。最高です。
--今後、日本はどうなると思いますか?
長期的には、2つの道があると思います。
1つはスイスのように、狭くても専門性の高い分野を究め、トップレベルを走る道です。
もう1つは、どんどん小さくなって、「昔は良かった」と言うようになる道。
できればスイスのようになってほしいですよね。得意分野で専門性を持ち、世界に付加価値をつけて提供する、そういう国になってほしいです。
がんばろう、日本。
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