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7000円のクリーニングに、未来が詰まってる。
洗濯ブラザーズ 茂木 貴志 - MOVの100人インタビュー
--まずは簡単な自己紹介をお願いします。
茂木貴志(もぎ・たかし)です。職業は「クリーニング屋さん」です。横浜、三宿、富ヶ谷の3か所で、クリーニング店「LIVRER」を運営しています。
元は劇団やアーティストの舞台衣装を専門にしていました。洗う前提で作られていない衣装なので、予想外のところに皮や鳥の羽根が使われています。汚れも汗汚れやドーラン汚れです。
一般にデリケートなものはドライクリーニングと思われていますが、ドライクリーニングでは水溶性の汚れは落ちません。難しい衣装をきれいにするために、独自のメニューや洗剤まで開発して営業してきました。
今では一般の方も対象に、水洗いに特化したクリーニングを提供しています。
経営は兄弟で一緒にやっていて、「洗濯ブラザーズ」の名前でさまざまな発信もしています。
--そもそもなぜクリーニング店を始めたのですか?
父がクリーニング業界にいて、その影響で弟もクリーニング業界に入りました。工場のメンテナンスや機械の導入コンサルティングの仕事から始め、2007年には自分でクリーニング店を持つようになっていました。
その傍ら、僕はまったく異なる、オーガニックコスメの輸入代理店の仕事をしていました。
仕事で海外に行く機会は多く、弟がやっているのでついクリーニング店に目が向きます。すると、2000年代の当時でも、欧米では環境に悪いドライクリーニングから水洗いにシフトしていることが分かったのです。
日本ではまだ誰もそういうことをしていないという気づきから、洗剤の開発や、全体のブランディングをしていきたいと思い、仕事を辞めて弟と株式会社バレルを立ち上げました。2016年のことですね。
--一般の方では、どんな人が顧客なのですか?
「超ファッション好き」な人たちです。ハイブランドなど、1着15万円、20万円の服を持っていて、他のクリーニング店では断られてしまったという方が訪れます。
だからそういう方が多い場所、スタイリストさんや芸能人も住んでいるような、環境意識も高い場所を選んで営業していますね。
--クリーニング業界についてどう感じていますか?
今、クリーニング店はどんどん減っています。人口が減っているのもありますし、カジュアルファッションやウォッシャブルの服が増えたこと、リモートワークなども要因です。
また、クリーニング店のオーナーの高齢化が進んでいて、大きな改革が起こりにくい環境にもなっていると思います。
僕らはそれを、チャンスと捉えているんです。
通常のクリーニング店の顧客単価が1500円から2000円なのに対して、僕たちは7000円から8000円。業界に一石投じるようなコンセプトで、洗剤、メニューや方法も自社開発し、受付も20代のアパレル好きな人が担当しています。
最初はなかなか意義が伝わりませんでしたが、最近は理解が深まり、徐々に需要が増えてきています。僕たちは一般的なクリーニング店とはまったく違うことをしているので、負けようがないのです。
--服とクリーニングの関係について、もう少し教えてください。
服はもちろん適切にメンテナンスするほうが長持ちしますし、そのほうが環境にも良いですよね。上質なものを買い、長く着るというスタンスです。
しかし従来、アパレル業界とクリーニング業界は、仲が悪いものでした。アパレル業界はメンテナンスをクリーニング業界に丸投げし、クリーニング業界はメンテナンスが困難であることをアパレル業界のせいにしていたのです。
今、上質なものを売るブランドが、環境保護やメンテナンスにも視線を向け始めています。「売ったもののメンテナンスをお客さんに提案できないってあり得ない」という考えが浸透してきて、メンテナンスの可能性がブランドの価値を上げるようになりました。
そんな中で、弊社はアパレル業界とのつながりが増えています。
僕たちは特殊な素材をどう洗えば長くケアできるか一緒に考えたり、専用の洗剤まで作ったりできるのです。
--「洗濯ブラザーズ」としては、どんな発信をしていますか?
洗濯ブラザーズのウォッシュウォッシュちゃんねる、より
「デリケートなものはドライクリーニング」というのもそうですが、洗濯機の使い方1つとっても、間違っている人は多いです。
日々の家事としての洗濯について、クリーニング屋さんとしての立場からアドバイスをしています。
たとえば、衣類を叩きつけるドラム式洗濯機は、硬水の欧米に合ったもので、軟水の日本ではあまり意味がありません。軟水の場合は、水流でこすり洗いする縦型洗濯機のほうが汚れが落ちやすいのです。
でもそんなことは誰も知らない、電器店に行っても教えてもらえない。
技術的なことも含めて、僕らの知っていることを隠しても仕方がないので、SNSやYouTubeで全部シェアしています。
--趣味は何ですか?
サーフィンです。19歳のときから続けていて、波があれば、国内も海外もあちこちに行きます。
サーフィンって、とても難しいものです。いきなりサーフボードを持って海に行っても、最初は立つこともまったくできません。
波は自分ではコントロールできません。パワーではどうしようもなくて、波のサイクルに自分が乗らないとどうしようもできない。
その難しさ、コントロールできなさが人生と似ていて、惹かれました。
プロになろうと思ったことはありません。自分よりもうまい人はたくさんいて、天井はありません。それでもそれぞれの楽しみ方があり、平等であるという点も、僕は好きですね。
--今後やりたいことは何ですか?
クリーニング業界でいうと、アパレルの路面店にクリーニング受付が付いているようになったら面白いと思います。
クリーニング店の店舗を増やすよりも、アパレル業界の中で、洗いや修理の受け皿を作れたら良いですね。
衣類の廃棄の問題や、バングラデシュで縫製工場が倒壊した問題など、メンテナンスを度外視したビジネスは人的にも資源的にも限界を迎えています。
「良いものを長く」の循環が、日本でも生まれていくようになれば良いと思っています。
個人の面では、仕事、趣味、生活が、自分の中ではあまり境目がなくつながっているので、一緒に全部まとめて楽しめる環境を早く作りたいなと思っています。
具体的にはまだ考えているところですが、海の近くに拠点を移すとか、クリーニング工場を作るとか、そんなところでしょうか。
--MOVはどのように活用していますか?
MOV市では、オリジナルの洗濯洗剤を紹介するポップアップストアも
知り合いに紹介されて、会社を立ち上げる時に入会しました。
店舗はあっても事務所がないので、商談などでオフィス代わりに使っています。
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