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直感でいい。好きでいい。ヒカリエで「絵を買う」ことのこれから
Bunkamura Gallery 塙 衣都子 - MOVの100人インタビュー

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--まずは簡単な自己紹介をお願いします。

塙 衣都子(はなわ・いとこ)と申します。株式会社東急文化村の社員で、Bunkamura Galleryの担当をしています。

今、東急百貨店跡地の開発計画にともなって、Bunkamura Galleryもヒカリエ8階に場を移して活動しているので、その事務所をMOVに置いています。

ただ、私自身は、もともとのBunkamuraの事務所に出勤していることも多いです。MOVと行ったり来たりで、現場にできるだけいたい気持ちがありつつも、会議などで来られない日もあります。

開発計画は、2029年度に竣工予定とリリースされています。そのさらに先となる再開業を考えても、今「ヒカリエ8階のメンバーとしてしっかりやっていきたい」と思っています。

--東急文化村に入社したきっかけは何ですか?

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父は版画家で、家にアトリエがあり、周りに絵があることがあたりまえの環境で育ちました。私にとっては、家に絵を飾ることも、絵を買う人がいることも、普通のことでした。

そんな環境の中で、少しの反抗心もあり、私はずっと音楽(フルート)の勉強をしていて、大学もその道に進みました。たくさんの芸術に囲まれているようでいて、実は大学に入るまでは楽器の練習ばかりしていたので、他のことは何も知らないような状態でした。

特に演劇の魅力に気がついたのは、大学に入って、一般教養の授業を受けてのことです。劇場に足を運ぶようになり、お芝居が始まる前の暗転に、心が動く感覚がたまらなく好きで、劇場で働くということに興味を持ち始めたものでした。

そんなところから、いろいろな芸術分野に興味を持っていくうちに、複合文化施設としてのBunkamuraって素敵だと思ったのが、入社のきっかけです。

最初に配属されたのはシアターコクーンで、案内係をしていました。現在の所属はギャラリー運営室というところです。

--Bunkamura Galleryの特徴について教えてください。

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私たちBunkamura Galleryでは、作家が作品を制作する、それ以外のすべてのことをしているといってもいいと思います。展覧会の企画をして、設営をして、現場に立って販売をして、お客様に作品をお届けすることも、また宣伝や告知なども全て自分たちで行います。

企画をした人間がその場に立ってお客様とお話をして、接客販売をする。私はこのBunkamura Galleryの運営方法は、最もうるわしいスタイルだと思っています。

Bunkamura Galleryの特徴として、私たちには、ふらっとお立ち寄りいただいた方にもお楽しみいただきたいし、「家に持って帰りたい、飾りたいな」と思える作品を紹介していきたい、という思いがあります。

作品を買うのが初めての方で「どうして良いか分からない」という場合でも、欲しいと言っていただけるだけで嬉しいです。

ギャラリーの醍醐味は、展覧会を通して発信する側面と、作品を買っていただく側面、両方にあると思いますね。ピンポイントに誰かが必要としている作品を用意するのではなく、広く届けることも使命だと感じています。

でも、一方でギャラリーは美術館とは違い、入場料がありませんので、販売をしなければ収入にはなりません。

私にとっては絵がある生活は当たり前でしたが、普通に、作品を購入する、ということはハードルが高いですよね。ギャラリーとしてきちんと収益を上げていく必要がある点は、簡単なことではないなと感じます。

--ヒカリエに来た今、「絵を買う」ということについて、どう感じていますか?

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何かの知識があるわけではなくても、ただの好みで良いと思うんです。理解などではなくて、直感でも良いのです。

作品の価値は、人によって違う「ものさし」によって測られると思います。投資目的を否定するわけではありませんが、ご自身が気に入って、ご自身のものさしで「これがいい」と思ったものを持っていてほしい思いはありますよね。

複合文化施設であるBunkamuraで活動をしている際も、販売の難しさというものは感じていましたが、そうはいっても、コンサートホールや美術館、映画館などが入る施設ですから、やはり訪れる方には何かしらの芸術に造詣の深い方が多かったのです。

ヒカリエにはまた別のお客様の層がある。販売という点での難しさはあらためて感じています。でも、ここで作品と出会い、初めて作品を購入する、という方がいらっしゃると、あまり現場にはいないと言っておきながら、偉そうなことは言えないのですが、そういった出来事をスタッフから聞くだけで、本当に嬉しい気持ちになります。

--仕事以外ではどんな活動をしていますか?

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最近は、丁寧に暮らしたいと思っています。

学生時代までは音楽の練習ばかりしてきて、会社に入ってからはなんだか仕事ばかりしていて、余裕が持てないまま暮らしてきたように思います。

コロナ禍を経て家にいる時間が少し増えたこともあり、お休みの日にはお料理をして、朝きちんと起きて夜に寝る、季節を感じて、草花を愛でる、育てる、そういうあたりまえのことなのですが、そんなことを大切にしたいと思います。

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こちらは塙さんが育てていらっしゃる沈丁花

お昼にお弁当を作ってみたりするのは、初めてお会いする方には何でもないことだと思いますが、以前の私からすると快挙です。

そんな風に意識が変わったこと自体が私にとっては大きな変化だと思いますし、仕事とまったく違うことでは無心になれるのも嬉しいです。

バランス感覚も必要だと思っていて、いち会社員としても。文化芸術へのありあまる愛を活かすためには社会性が必要というか。

作り手とお客様の橋渡しをする立場として、専門性と社会性のバランス。私はものすごく特別なことはできないので、社会性を磨いていかなくてはとも思っています。

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