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ブルーオーシャンを飛び越えて ── 趣味を事業に変える発想力
株式会社AGW 山﨑 諭 - MOVの100人インタビュー

--まずは簡単な自己紹介をお願いします。
山﨑諭(やまさき・さとし)と申します。
2016年にいわゆる「バク転教室」のアクロバットジムを開始し、現在は2021年に法人化した株式会社AGWで3店舗を運営しています。ちなみに「アクロバットジム」は我々が勝手に言っている造語で、本来は「アクロバットスタジオ」の方が一般的かも知れません。
それとは別に、ファッション関係を中心としたライター業も、バク転教室より以前から続けている仕事です。
--ご経歴を教えてください。

18歳で上京し、ファッション系の専門学校(バンタンデザイン研究所)を卒業して、ファッションライターの事務所に入りました。
アルバイトでアシスタントをし、自分でも仕事をして良いと許可をもらったのが23歳のときです。そこから、ファッション誌に記事を書くようになりました。
最初は、ファッション雑誌のスタイリストとライター、二足の草鞋でした。しかし、スタイリスト業は現場にも行かなければならず、雑務による拘束時間も長くて、ライターと比べて利益率が低いと感じました。そこで、次第に時間の融通が利きやすいライターの方へ移行することにしたのです。
2024年に事務所は辞めて、フリーのライターとして活動しています。
--アクロバットジムは、なぜ始めたのですか?

昔からダンスをしていて、バク転などのアクロバットをすることができました。数年間は仕事が忙しく、アクロバットからも離れていましたが、ダンス仲間から誘われて再開したのです。
子どもの頃は、友人から習い、砂場でヘルメットをかぶって練習したものでした。再開した頃もまだ教室はなく、仲間内で割り勘で練習場を借りてやるものでしたね。
しかし続けるうちに、当時代々木だった自宅から新横浜の練習場まで通うのが面倒になってきました。
また、20代後半は限界まで仕事を詰めていましたが、このまま続けるのは無理だと少し減らしたこともあって、30代に入ってからはお金と時間に余裕が生まれていました。
そこで、お金を儲けたいというよりも前に、自分の練習場を持ちたいと思ったのです。
自分はいつでも練習でき、空いた時間はレッスンをすれば良いと、練習場の仲間をインストラクターに誘って、錦糸町に「アクロバットジムホワイト」を構えたのが2016年です。
その後、2020年に荻窪に「アクロバットジムホワイト」の2号店を、2024年には茅場町駅近くに「W NIHONBASHI(ダブル 日本橋)」をオープンしました。
--顧客は何のためにアクロバットジム(バク転教室)に通うのですか?

「バク転教室」は通称で、僕たちが教えているのは「アクロバット」や「パルクール」*です。*パルクール:都市環境に存在するものを利用し、身体能力を活用してダイナミックに移動するスポーツ
アクロバットの良さは、他のいろいろなものと組み合わせられることです。
ダンスに取り入れたり、俳優のオーディションで武器として使ったり。チアをしている子どももいれば、忘年会の一発芸で使いたいという年配の方もいます。
技ができるようになれば自己肯定感も上がりますし、子どもたちもかっこいいからやりたい。需要が消えることがない分野だと思います。
一応のめやすとして、バク転は週2~3回の頻度で通えば、多くの人が2~3か月でできるようになるとお伝えしています。でも、バク転ができればバク宙をやりたくなりますし、それもできれば連続技をしたくなってきますよね。技の数はたくさんあって、終わりはありません。
--アクロバットジムの市場はどのような状況ですか?

僕が店を出したばかりの頃は、ほとんど競合がないブルーオーシャンでした。
しかし、そこから10年が経ち、教室・スタジオの数も増えましたし、最近は大手スポーツジムの一部が進出してきているとも聞きます。
まだまだレッドオーシャンにはならないものの、イエローオーシャンにはなりつつあると思います。
ただ、僕の店舗についていえば、今のところ大手に奪われそうな気配はありません。
「バク転教室 東京」ではSEOで検索上位を取れていて、今「W NIHONBASHI」では「パルクール教室 東京」での上位を取ろうとしています。
--今、仕事以外では何をしていますか?

趣味は山ほどあります。やはり体を動かすことが好きですね。最近は格闘技系で、柔術やボクシングをしています。1日に2レッスン行くこともありますよ。
運動以外では、スマホゲームやカフェ巡りですね。それと、英語の学習を少しずつしています。フィリピンのセブに投資物件を持ったことがあり、その関係で現地の管理会社とやりとりをするために始めました。
投資はいつも損ばかりで、不動産でも株でも、儲かったことがありません。フィリピンの不動産も、コロナ禍で借り手がいなくなって、すぐに大損の価格で売ってしまいました。
でも、儲かった話は面白くないけれど、損をした話ならどこでもネタになって友達ができやすいので、それはそれで良いと思っています。
--今後、やりたいことは何ですか?
自分の趣味のために始めたアクロバットジムが、今では完全にビジネスになりました。社員を食べさせることにフォーカスが移ってきています。40歳になって、自分が今後もアクロバットやパルクールをする側であり続けることの難しさも感じているところです。
初心のハングリーさを思い出すためにも、新たに趣味に基づく事業ができたら良いなと思っています。
今考えているのはたとえば、旅行者向けの英語の漫画カフェ。
外国人が日本で漫画を読みたくても、漫画喫茶に置いてあるのは日本語の漫画だけですよね。英語の漫画だけの漫画喫茶を作れば需要はあると思いますし、僕も英語の勉強になります。
もう1つ考えているのは、格闘技とピラティスによるリカバリーを組み合わせたスタジオです。
実は2年前に両ひざの手術をして、本格的なスポーツができない間、リハビリを兼ねてピラティスをしていました。
これも趣味の一環として興味はありますが、競合となる格闘技ジム・ピラティススタジオが多いので、事業として行うのは難しいかもしれません。
いずれにしても、趣味と実益を兼ねたものでないと、忍耐力のない自分は続かない、無理だなと思っています。
成功すると思ってやるのではなく、当たるまでやり続ける、それまでは自分が趣味の場として享受する、そういう気持ちで事業をしています。
--MOVはどのように利用していますか?

5周年の頃に入ったので、在籍は8年くらいですね。
代々木から渋谷に引っ越してきて、自宅からすぐ近くになりました。
MOVでは仕事よりも英語の勉強をしていることが多いです。大体はオープンラウンジの、壁際のカウンター席にいます(お菓子を食べながら作業できるので笑)。
多いときでは週に2~3回、少ない時では数か月に1回と、利用には波があります。それでもMOVの会員であることは、僕にとって、「いつでも来られるという権利」なんです。あまりに居心地が良くて、ついだらけてしまうのは課題ですけれどね。
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