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コンセプトは「一宿一芸」
松戸のアーティスト・イン・レジデンスPARADISE AIR


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アーティスト・イン・レジデンスってご存知ですか?

さまざまな分野におけるアーティストたちを、ある土地に招き、一定期間滞在してもらいながら、彼らの制作活動を支援するという活動で、その起源は、遠くミケランジェロの時代にまで遡るのだそう。近年では、アーティストが、その土地に暮らし寄り添うことでうまれる地域活性と、新たなアート表現とが注目されています。

千葉県松戸市にあるPARADISE AIR(パラダイスエア)もそのうちの一つ。現在、aiiima1にて開催している「PARADISE AIR Exhibition」に際し、運営メンバーのひとりで、広報を担当されている藤末萌(ふじすえもえ)さんにお話を伺いました。


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---PARADISE AIRって?
千葉県松戸市で展開しているアーティスト・イン・レジデンス。「一宿一芸」をコンセプトに、国内外から入れ替わり立ち代わり訪れ滞在するアーティストの、作品制作や発表を支援しています。千葉県松戸市にあるパチンコスロット店「楽園」の協力を得て運営しています。PARADISE AIRという名称もビルオーナーに由来していて「楽園」のパラダイスと、Artist in Residenceの頭文字からとったAIRでエア。2013年に立ち上げました。
---建物はもとホテルだとか、設備はどんな感じですか?
パチンコスロット店「楽園」は、もともと廃業したホテルを改修したものでした。利用されていなかった上階を、地域活性化のためと、ほぼ無償でご提供いただいたのがはじまりです。各室、バス、トイレ、テーブル、ベッド、エアコン、冷蔵庫、電気ポットがあります。キッチンと洗濯・乾燥機は共有です。
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▲スレッシュ・ジャラニ(インド)と滞在中の彼の部屋。彼は美術史家でありアーティストであり、バンガロールのアーティスト・イン・レジデンス[1.Shanhtiroad Studio]の運営者でもあります。撮影:加藤甫


---どうして松戸市なのですか?
江戸時代、江戸と水戸をつなぐ拠点として、多くの旅人が行き交い、その旅人たちの宿場町として栄えていたのが松戸だそうです。地元住民の邸宅には、過去に訪れた文人画人が、宿泊料代わりに残した作品が今も残っているとか。 また現代でも、成田空港と東京都心の中間にあり、JR常磐線で上野駅まで20分という松戸駅。さらに駅前から徒歩2分という好立地条件にあるPARADISE AIRは、こうした松戸宿の歴史伝統を踏まえ、アーティストと日本の芸術文化にとっての新しいトランジットポイントとなることを目指しています。
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▲フローレンス・ラム(香港・カナダ)による江戸川河川敷でのパフォーマンス。撮影:加藤甫


---PARADISE AIRの特徴となる活動は?
PARADISE AIRには、3つのプログラムがあることが特徴です。 公募によって選出された海外のアーティストの渡航・滞在・作品制作を、3 ヶ月間フルサポートする「ロングステイ・プログラム」。アーティストにとどまらず、キュレーターやリサーチャーらの短期滞在を受け入れ、地域への「一芸」の提供の代わりに最長4週間まで滞在可能な「ショートステイ・プログラム」。そして、アーティストと地域をつなぎ、多様な学びと交流を促す「ラーン・プログラム」の3つです。これらを軸に活動を行なっています。松戸市民の皆さんと協同して、アーティストの活動をのびやかにまちに展開することで、松戸の文化をより多層的にアップデートすることが私達のミッションです。
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▲ルース・セレステ(パラグアイ)による松戸駅西口デッキでの作品制作風景。撮影:加藤甫


---これまで、参加されたアーティストは?
これまでPARADISE AIRには、42の国と地域から120組190名(2018年4月現在)のアーティストが滞在しています。先週ちょうど、ベルリンから来ていたアーティストが、松戸市にある私設博物館「昭和の杜」の外壁に壁画を描き上げたところです。館長さんのご厚意で、30メートルもある大きな壁を使わせていただきました。
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▲ドイツ出身のアーティスト、ナディア・コロヅィーと彼女の制作した壁画作品


---運営チームはどんなメンバーなんですか?
コアメンバーは様々な分野でフリーランスとしても活動しています。建築、音楽、映像、パフォーミングアートなど、それぞれ専門性が異なっているので、多様なアーティストや作品に対応することができるのがチームの強みです。また設立当初から、地元住民、松戸市、民間企業と協力して運営してきました。
---今回の展示について伺います
TRANSITと題した本展は、設立から5年の間に記録したアーティスト達との日々と、その移り変わりをご紹介するものです。
見どころはふたつ。

▶︎その1

写真家・加藤甫によるPARADISE AIR滞在アーティストの日々を捉えたポートレート・フォト

PARADISE AIRでは設立当初から、日々のアーティストの活動を写真として残し、記録することに試行錯誤してきました。 松戸に滞在していた日々を残すことで、活動の記録としてはもちろん、どんな「人」がやって来たのかを現在進行系で捉えています。これまで撮影された膨大な写真の中から、コーディネー ターが選んだ数点をプリント作品として展示しています。

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▲aiiima 1 展示会場 写真展のハッシュタグは#p_airです。



▶︎その2

LONGSTAY Program 2017 ドキュメントブックの刊行

年度毎の活動記録として、PARADISE AIRでは毎年ドキュメントブックを制作しています。会期に合わせ、2017年度の記録をまとめたLONGSTAY Program 2017を先行で販売します。これまでの制作物からはがらりと様相を変え、プログラムの活動報告という枠を飛び出した、アートブックの様な仕上がりになりました。約220ペー ジに渡るボリュームの中で滞在中のアーティストの日々と作品、そして数々のレビューをまとめています。

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▲ドキュメントブック PARADISEAIR LONGSTAY Program TOUR 2017は、1000 部限定で¥1,600(税込)。



本展覧会を未来への経由地と見立てた、PARADISE AIRの新しい試みです。ぜひご参加ください。

ドキュメントブック PARADISEAIR LONGSTAY Program TOUR 2017は、今回が先行販売とのことなので、お見逃しなく!
また展示ではLONGSTAY Program の記録映像も投影されています。現在行われているLONGSTAY Program2018 公募情報と合わせて、松戸の街と密接に関わる長期滞在プログラムの魅力もご覧いただけます。

松戸に行ったことのある人ならすぐにわかるアートスポットの背景を知ることができたり、異文化の視点でアートに昇華された日本の街並みを改めて眺めてみたり。会期は4月29日まで。ぜひご来場ください。