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ALL YOURS 流 ALL LOCALS ー これからのモノづくり

ALL YOURS代表 木村 昌史さんインタビュー

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「It's ALL YOURS」。
文字通り「すべては あなたのために」というコンセプトのもと、環境やトレンドに縛られない、機能的なプロダクトを追求しているALL YOURS。動きづらい、濡れる、臭う、などといった日常で感じるストレスを無くすため、さまざまな開発を続けている。
また、捨てない服を作る、というのが一番のエコだと考え、"使い手が使い続けること"にフォーカスしたモノづくりを徹底。購入後のケアやリペアなども積極的に取り入れるなど、使い手に寄り添う工夫を怠らない。

今回は、そんなALL YOURSが描く、これからのモノづくりについて、代表である木村昌史さんに話しを伺った。中心となるのは、ブランドを支える店舗と工場の在り方についてだった。


―ALL YOURSの店舗がある池尻大橋へは、今も住まいのある茨城から通っている木村さん。東京と地方を行き来するなかで、どんなことを感じていますか?

「東京が発信しなくなっちゃったから、面白くないなって思っちゃってる。」
今東京で一番にぎわう売り場といえば、北海道の物産展だったりする。要は輸入したものを消費するだけの場です。では逆に地方で東京のモノが売れているのかといえば、そうでもない。
とはいえ、とても大きな消費の市場である東京。ファッション産業の根幹は東京に集中しつつある。未来のファッション産業の担い手たちを育てる教育の場もまた東京に移動してきている。

「でも残念なことに、彼らは消費の場に来ている訳です。クリエイティブの場に来ていない。」
アパレルの学校を卒業した後の就職先は、その多くが販売員。よほどの信念がない限り、制作に携わったり、ましてや自分のブランドを持つなんてことは難しいのが現状です。やる気のある若者が諦めざるを得ない構造。これを打破するために、自分の工場を東京につくりたいと考えています。


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―工場というとファッション界のもつ煌びやかさとは対極にあるように感じますが?

ファッション業界がよく口にする「クリエイション」。それが意味するものは多くの場合がアート性です。しかし日本は欧米に比べたら絵画や彫刻といったアートを購入する人がまだまだ少ない。そんな中で、アート性=クリエイションばかりを追及するやり方でいいのだろうかと思っていて。
「まず、選ばないといけない。アートピースとして生きていくのか、商業デザイナーとして生きていくのか。」
後者であれば、その道を、工場という場で提供することができる。


―モノづくりの基盤である工場。そこで提供できる商業デザイナーとしての道とは?

「商業デザインをする上で一番大事なのは、工場というモノづくりの現場を知ること。」
まず、モノのつくり方を学びましょう、と。どんな機械があり、どんな技術があり、どんな流れがあるのか。その知識はいずれ、工場との交渉の際に、最大の強みになる。デザインを押し付けるだけでなく、具体的な作業の指示を出せるようになるからです。そうすると工場がついてきて、自分がつくりたいモノがつくれるようになる。


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―やる気のある若者には、製造の止まっているアイドルタイムに、生地や機械を供給して、自分が作りたいものをつくり、ブランドとしてALL YOURSの店舗で販売する機会を与えたいと話す木村さん。ではそういう工場を東京につくる意味とは?

工場は、デザイナーとして生きていくための強みを培う場、アパレルの学校では提供できない学びの場であると同時に、ビジネスとして自分が成り立つのか、という実践経験もできる場です。それが東京にあるということに大きな意味がある。

東京でちゃんとビジネスとして自分が成り立つことがわかれば、東京である必要も、常に東京にいる必要もまったくないからです。地方でブランドを立ち上げたり、工場の中でファクトリーを支えながらブランドをつくったり、そもそもつくる方が好きになって工場の責任者になったり、土地でちゃんとモノづくりがしたい人は地元に帰ったり、田舎暮らしをしたいという道だって開けてくる。

また工場側は、制作意欲のある若者を招き入れることで、高齢化により技術もノウハウもどんどん疲弊していくというスパイラルから抜けだすことができる。
「工場はみんなの出口を増やすことができる場所になるはずなんです。」


―若者の選択肢として、"地方に根付く"といった道に触れましたが、東京における"ローカル"についてはどう考えますか?

「あたりまえだけど、東京にもローカルはある。」
地元を愛する東京生まれの人も、良い老舗もたくさんある。地方から上京してくる人たちも大勢いるのに、商店街には降りたままのシャッターが目立つようになってきている。集客力はあるのに、閉まっていく店が増えている。上京してきた人たちは、そこで営まれているローカルに溶け込む機会や場所がないから、単なる居住エリアになってしまっている。これが東京のローカルの問題で。
「だからこそ、店のサービスはローカルにしたいんです。店はローカルにしか存在できないから。」


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―本来は遠方でやるようなポップアップ・ショップを店舗の近所で開いたり、プロダクトとは全く関係のないサークル活動(隔週で開催されるゆるいランニングサークルTEIHEN)をしていたりするのは、そういった理由からですか?

「店をどういうふうにコミュニティ化していくかっていうのが重要だなと思っていて。」
店を訪れてくれた人と、地域に根付く他の店や、そこに訪れる別の人たちとのコミュニティをつくりたいと思っていて。だから "服を買う"以外のモチベーションで人が集まれる機会をつくっています。例えば"飲み会やりましょう"とか"走りに行きましょう"とか"自転車乗りましょう"とか。そうして人柄に触れて、コミュニティが生れて、結果としてブランドの支持者が増えていく。プロダクトの周知とかモノの消費とかは、共感やコミュニティの後に生まれると思っています。


―東京をもう一度面白い場所にするために

東京は大資本が集中して、資本力のあるブランドのオンリーショップばかりが目立つようになってきている。そこも東京が抱える問題だと思っていて。昔、原宿のプロペラ通りにあった、プロペラっていうアメリカンカジュアルの店(2003年閉店)は、ホームセンターと同じようなクオリティのTシャツとか、チープなモノを扱っているんだけど、不思議とそれがすごくよく見える。
「でもそれは、その店に置いてあるからかっこいいんです。」

そういうお店がなくなっている。東京のローカルの人たちがやりにくくなっているんです。でも、地方が元気になれば、今、一極集中で世界の中心のようになっている東京の資本も消費の市場も分散する。そうなれば地域に根付いた影響力のあるセレクトショップがもっと増えてくる。東京もローカルな店がやりやすくなる。
「地球の真ん中なんて、どこにもないから。」


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モノづくりをする "工場"で、地域と若者が繋がるスパイラルを生み出し、それを拡散する"店"を地域にとけ込んだ場所にすることで、東京も力のある面白い場所にしていきたい。"地球の真ん中なんてない"という言葉はまさに、ALL YOURSさんが描く未来のAll Localsなのだろう。

現在CAMPFIREにて24カ月連続クラウドファンディングに挑戦されているALL YOURSさん。8月18日から8月29日までaiiimaにて開催される「hello ECOsperience」では、クラウドファンディングの実際の商品の試着会や、手持ちの服を機能的にアップデートしてくれるサービス「Second Life」なども展開される。

また会期初日に開催されるオープンニング・イベント「meet ECOsperience」では、トークショーに登壇いただく予定!実は昨年開催したイベント「NEO Ethical Morning #4」にもご登場いただき、パワフルで人を惹きつけるトークで、ひときわ会場を沸かせていた木村さん。今回はどんなお話しが伺えるのか楽しみで仕方ない。