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2023.08.15
11年愛用してきたソファの解体(張替え)に挑戦!前編ー MOVしごとば探訪 #006
知っているようで知らない日用品を実際に解体してみることで、なりたちを理解し、もっと好きになり、ずっと大事に使い続けてもらえる。そんな体験のヒントになる『生活の解体展』が、8月19日から開催されます。
展示に合わせ、なにかMOVで使っているものも解体できないかと思案していたところ目に止まったのが、オープンからずっと変わらぬ姿(修理補修なし)でみなさんのお尻を支えてきた1人用ソファ。張り地に限界がきており、買い替えも検討されているところでした。
壊れてはいないし、できれば張替えて使いたい。せっかくなので、解体も自分たちで体験してみたい。そんな面倒なリクエストに、とても快く応えてくださったのが、いすはりかえ東加工所さんです。
先代が創業したのが1980年代、約40年余りの歴史があり、代表の太平(おおひら)さんは1級椅子張り技能士という、大手家具メーカーも信頼を寄せる工房です。 「張替えは難しいけど、剥がす工程なら皆さんでもできると思います」というありがたいご提案をいただいたので、さっそく神奈川県横浜市港北区にある工房にお邪魔しました。
MOVしごとば探訪、第6弾は番外編。いすの張替え体験をレポートします。
張替えるのは...
さて、今回張替えるのはこちらのソファ。アームのないシンプルなフォルムながら、背中の鋲どめが地味にテクニカルな1脚です。白い張り地が2脚、チェックの張り地が2脚の、あわせて4脚。このように、11年の歳月ですりきれてしまった箇所も。 本日の先生は、大学生にして、張り地剥がし歴約20年という熟練のアツヤせんせい。幼稚園生のころから張り地剥がしをやっていたそうです(!)「小さい頃は、外した針1つ1円のお小遣いをもらってたので、工房内で拾い集めてたんです。」というほっこりエピソードも。 どうでもいい情報ですが、張り地剥がしに挑戦するのはこの3名。とわたし(てんちょう)です。左から、MOVの創設に携わった本社のT氏と現MOVスタッフ。わくわく感が伝わるでしょうか。
作業スタート
まずは、太平さんから流れを解説いただきます。剥がす前に、360度ぐるりと現状の写真を撮っておくのだそうです。さっそく1周ぐるり10カット。張替えの工程で役立つこともあるのだとか。
次に外せる前脚(?)をくるくるまわして分解。ここはネジです。張り地によって脚の色が違ってたことに、11年目にして気づきました。
いよいよ剥がしていきます。まずは、タッカーというホチキスの親分みたいなもので打ち込んだ、これまた大きなステープルの針を外します。針の根元に、ハンマーで錐を差し込み、浮き上がったところをニッパーで挟んで、先端のカーブをうまく使ってクルンと外していきます。土台を傷つけないようにやさしく。
今回は、張り地以外すべて再利用するので、本体の木材を傷つけない力加減で進めていきます。座面の裏側を覆っている黒い布(ふだんはぜんぜん見えないところ)を剥がすだけでも、一苦労。
ようやく底がとれたと思ったら、さっきの倍以上の針が打ち込まれた裏面が登場。まだまだ序盤だったことを思い知ります。ここで早くも腰崩壊。姿勢って大事です。 そのまま底を外していくのかと思いきや、次は背面に着手。パイピングのところは特に、針の捜索が困難でした。見えないように打ってあるんだなと、職人さんの技に思いを馳せます。(でも大変。ここ!みえないの!)
ようやく背面が外れ、ウレタンが姿を表しました。ウレタンは再利用。破らないように大事にとりはずしていきます。ところどころにのりが付着してるので、ヘラを使って慎重に。
剥がせるところから剥がしていき、徐々に椅子の構造の全貌を知るんだそうです。なんか対峙してる感じでかっこいい。せんせい曰く、張り地の下に隠れていた構造を見て、木工職人さんの技術に感銘を受けることもあるんだそうです。
「作業中はお尻をつけません」とせんせいにいわれていたのに、椅子用の作業台に腰掛けている自分。ごめんなさい。結局ちからがはいらなくて、椅子と立ち位置交代しました。教えは守ること! アクセントになっていた鋲はこんな風にとめられていました。ブスッと刺してくるっと曲げる。それにしても、背中のテンションを支えていたシンプルな構造にびっくり。ここに来なければきっと見ることなかったですね。
鋲をとめていた金具を巨大ニッパーでカットしていきます。すると、正面のくるみボタンがころんととれます。
ようやく背中の一面が剥がせました。はずしてみると、その意外なサイズにまたびっくり!こんなに大きかったんですね。 座面と背面をつなげていたビスを外します。より解体感でてきました。たった6本のビスでつながってたの、驚きでした(がっかりした人も笑)。
パーツにわけてさらに剥がしていきます。それはもうひたすらに。そうしてすべて剥がせたものがこちら。(奥に作業の遅い人)
ようやく剥がしの工程はおしまいです。あとは剥がした張り地をもとにパターンを起こし、裁断、縫製して、張り直していくそうです。職人さんは、剥がしと張りの分業ではなく、張れるようになって一人前なんだそう。その様子は後編でご紹介します!
剥がした張り地と、うまれかわったソファは『生活の解体展』でもご覧いただけます。ぜひ、実物を見にいらしてください!
ちなみに、この日おせわになった道具たち。外した針の数にご注目(握力はゼロになりました)。
MOVしごとば探訪とは...多彩なMOVのメンバーさんの働いているところにお邪魔して、お仕事ぶりを拝見したりときには体験させてもらったりする企画です。