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インターネットがないアフリカ農村部に、圧倒的安価なデジタルプラットフォームを! 株式会社Dots for 大場カルロスさんにインタビュー

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もしもスマートフォンがなかったら。そんな生活をみなさんは想像できますか?美味しいお店を探したり、空いた時間に動画を楽しんだり、SNSで世界の人と繋がったり。あらゆることがクリック一つできる今もなお、アフリカ農村部の多くは、デジタル化やインターネットから取り残された状態にあるそうです。

「こうした地域に生まれた人たちは、地方にあるさまざまな問題を我慢しながら生活するか、またはその問題のために生まれ育った地域を離れて都市部へ移動するか。その選択を強いられているんです。」そう語るのは、株式会社Dots for(ドッツフォー) 代表の大場カルロスさん。バックパッカーとして世界100ヵ国近くを巡り、キャリアにおいても海外での新規事業を多く手掛けてこられました。

そんな大場さんが、アフリカ農村部にデジタルプラットフォームを構築するべく2021年10月に立ち上げたのが株式会社Dots forです。2022年2月に開催したシードステージ限定ピッチイベント『登龍モヴ』で優勝され、ここから1年間MOVで応援させていただきます。まずは事業についてのインタビュー。アフリカで起業ってどうなの?というところを伺いました。

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8組のスタートアップが登壇した『登龍モヴ』。新規性、実現可能性、社会性、そして情熱などが評価ポイントでした。前列中央が優勝者のおひとり、大場さん。

てんちょう
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アフリカの地方農村はいま、どんな状況なのですか?

大場さん
大場さん

地方の農村に住む人の収入は上がってきているし(月収$60を超えてきている人が5%程度)、スマートフォンの値段は10年前に比べて半額くらいまで下がってきています。スマートフォンが買えるし欲しい!というニーズは日々高まってきているにも関わらず、未だに購入に至っていないのが現状です。その理由は、村にいる限りインターネットに繋がらないからです。

一方で通信会社は、利用者が少ない農村部では採算がとれないため、いつまでもインフラ投資をしません。この負のループに直面しているのは、西アフリカだけでも2.5億人、アフリカ全体だと8億人にも及ぶと見ています。これだけの人が、本当はSNSや動画コンテンツを見たいと思ってもできていないのが現状です。

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最初の拠点に選んだのはベナン。ICT推進国家で外資スタートアップが設立しやすく、治安も安定、既存通信網のデータ通信費が高いことなどが理由。それにしても、カラフルな衣装が印象的なアフリカ。もしもSNSで発信できたなら、世界中から「Like!」があつまるのだろうな。

てんちょう
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そんな負のループを抜け出す解決策とは?

大場さん
大場さん

メッシュネットワーク技術が搭載されたルーターを各村に設置して村の中を無線ネットワーク化し、デジタルサービスや動画コンテンツを楽しめる仕組みです。

この方法はこれまでの基地局を建てる方法に比べて、圧倒的に短期間・低コストで、従来だと問題であった採算性をクリアしながら、農村部の人たちの生活レベルにあわせた価格設定ができ、ビジネスとしてもサスティナブルなかたちをつくることができるんです。

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広くて高い空に、憧れてしまいます。

てんちょう
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そもそもアフリカで起業しようと思ったのはなぜですか?

大場さん
大場さん

前職でタンザニアの農村部を回っている際に、地方にいることで色んな発展から取り残されている人々の暮らしを知りました。経済的な側面だけでみれば、都市部に投資した方が当たり前に儲かるのかもしれませんが、それだけじゃない価値がアフリカの地方農村にあると感じました。彼らの抱えている問題を解決できれば、その後の伸び代はどこよりも大きいのがアフリカの農村部だと思ったんです。

ここに人生を掛けたらおもしろいだろうな、自分の生きた功績みたいなものを残せるだろうな、という思いが大きな決め手になりました。

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バイクタクシーからの一枚。電線はみえるけれどネット通信はまだまだの状況。

てんちょう
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すでに導入された村もあるそうですね。実際どんなふうに進めているんですか?

大場さん
大場さん

直接村に行って、村長に「我々はこういう者で、我々のサービスを通して村民の生活が改善していきますので、村の中に設置させてください」と説明していく感じですね。

誰と知り合いか、誰が言ったか、というのが重要な社会なので、他の村の村長の紹介や、その民族の長のような影響力のある人を事前に抑えておくと、比較的話が通りやすいです。

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機器の設置もすべて自分たちの手で。

てんちょう
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アフリカでの起業、難しさはどんなところですか?

大場さん
大場さん

距離が遠いとか整備されてないとかもありますが、前例がなく、誰もわかってない部分を切り開くというのが難しいところかなと思いますね。それが、逆におもしろいところでもありますが。

あとは、国境を越えると未知なことが起きるのも大変だなと思ってます。例えば、この間はじめてプロダクトを空輸で郵送したのですが、現地で受け取れるまで1ヶ月以上かかることを知りました。まだまだ知識不足なところもあるので、関税とか税法とか、この国はどうだっけ?というのも調べながらやっています。

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「知らない奴がきたというのが、いちばんノーと言われやすい」そうですが、このとけこみよう!受け入れられてる感が伝わります。

てんちょう
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日本に比べて、やりやすかったところはありますか?

大場さん
大場さん

さっき言ったみたいに、ふらっと村に行って、村長はどこに住んでる?と聞けばすぐに会えるような形式張らないところがあります。日本だと想像できないですよね。役所や役場でアポ取って、また数週間後にきてくださいみたいな。笑。

てんちょう
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これまででいちばん嬉しかったことは?

大場さん
大場さん

自分たちが「これはいける」と思って作った物を、実際に使ってくれる人が何人もいたっていうのは、すごく嬉しかったですね。文字通り朝から晩まで利用してくれる人もいたし、「うちでも使えるようにしてくれ、うちの村にはいつ来るんだ」ってしょっちゅう言われます。それはもうすごく嬉しいですね。

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大人から子供まで!みなさんの夢中な顔がたまりません。

てんちょう
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海外起業のルーツは、バックパッカー経験ですか?

大場さん
大場さん

そうですね。やっぱり自分が知らないところに行くほうがワクワクします。予想もつかないことがガンガン起こるんですよね。日本とか、アメリカや西ヨーロッパみたいな先進国のことは、テレビやメディアでも取り上げられるし、雰囲気はなんとなく想像できる。一方で、誰もあまり行ったことないところに行くと、想定外のことが起きる。それをどう乗り越えるかが楽しい!という考え方で、今もそれは変わってないですね。

てんちょう
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印象的な国ってありますか?

大場さん
大場さん

バックパック時代で思い出深いのはグアテマラですね。スペイン語がすごく安く学べるので、アメリカに留学している時に休みがあったらしょっちゅうグアテマラにいってスペイン語を習ったり、中南米の国々を回っていました。

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ベナンはフランス語。いろいろな言語を習得するのは趣味なのだそうです。

てんちょう
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アフリカでの起業、周りの反応は?

大場さん
大場さん

私は25歳くらいまでずっと地元にいて、あまり真剣に人生を考えてなかったのですが、あるきっかけから「人生についてちゃんと考えないと」と思い直して、キャリアを考えたり、英語を学んだり、アメリカにMBA留学したりと、そこから人生を仕切り直したと思っていて、今は43歳ですが気分的にはまだ20歳くらいの気持ちです。日々学びの連続で挑んでいます。そう考えると、20歳の起業だったらそんなに変じゃないですよね。

まあ実際には43歳ですし、ライフステージとしては、2歳の子供がいて起業、しかもアフリカで、ということで、周りからは呆れられるか、怒られていますね。でも、少なくとも奥さんは応援してくれているので、それがすべてかなと思ってます。

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『登龍モヴ』の募集の条件「いくつになっても!マインドは青春まっただなかの方」そのものですね。

てんちょう
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素敵ですね。今後の計画を教えてください!

大場さん
大場さん

導入する村の数を増やして、僕たちのサービスを使ってくれる人の数を増やす。これをがんばっていきたいなと思っています。

サービスとしては、僕たちが村で唯一のデジタルプラットフォームという状況になるので、動画を見ることができますというだけではなく、このプラットフォームを通してどうやったら彼らの生活を変え、収入を上げられるのかというところを探るのが、すごく大事な通過点だと考えています。

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「とくに収入を上げるのは生活を底上げする大事なファクター。それをできるようにしていきたいなと思っています。」

てんちょう
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思い描いている未来はどんな風景でしょうか?

大場さん
大場さん

アフリカの農村部にある制約を取り除いて、彼らが生まれたところ、住みたいところに住めるのが当たり前の世界をつくりたい。そのためにデジタル化という下地づくりをしています。そして、インターネットを通して、知らなかったことを知れるのがまず大事です。

「こういうことができるんだ」と知った人のうち「やってみよう!」までいく人が1%でもいれば、そこからさらに影響を受ける人もいるだろうと思うんです。そういう人たちに、情報という機会を提供できる状態になれば、次のステップに進むことができるのかなと期待しています。そうして、100年後、200年後に、あの時Dots forがいてよかったなと思ってもらえるような世界を作っていきたいですね。

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カンパニーロゴのコンセプトは、アフリカと世界をつなぐ「絆」の環。サービスを通して繋がるアフリカの人たちと世界中の人たち、構造としての分散型無線ネットワークを大小複数の「dot」と「幾重に重なる環」として表現。下地の色は、アフリカの大地、赤土の色だそうです。

てんちょう
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では最後に「これだけは言っておきたい!」をどうぞ!

大場さん
大場さん

「アフリカに遊びにきませんか?」というのを、最近は会う人会う人に言っています。

アフリカというと貧しいイメージがあるかもしれないですが、都市はすごく発展してきていますし、農村部もみんなすごく楽しく生きている。そういう状況をもっとたくさんの人に知ってほしいなと日々思っているので、ぜひアフリカにきてください!



もしもスマートフォンがなかったら、この記事を読むこともできないですね。
大場さんの取り組みが広がって、デジタル化の第一歩が自分の村だったことを誇らしげに語る人も出てくるんだろうな、という未来を想像します。

ちなみに大場さん、アフリカのさまざまな地域に精通されていますので「この事業ならこのあたりがおススメ」といったアドバイスもしてくださるとか。アフリカに興味のある方はぜひ!お声がけください。
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